コール音で目が覚めた。反射的に発信源である携帯を掴みあげると、職場でも仕事関係でもない名前が表示されていた。それを握ったまま考えてしまう。
やけに静けさを感じ、外を見やるとカーテンが光を遮っていた。朝には早すぎる時間であろう事を、外の気配とまだ残る眠気と、それから液晶の指す数字から知った。
「…もしもし?」
留守番電話に入る直前に通話ボタンを押した。
「進ちゃん!雪!雪降ってんねん!」
久しぶりに耳にするの声は相変わらず一方的で。
「うわぁ、積もるかも!ゆーきーやー」
ひどく楽しそうだ。
、お前なぁ、今何時かわかっとるんか?」
普通の生活をしている人なら…もそのはずだが…はおそらく起きない時間。おかげで貴重な朝の時間を奪われてしまい、自然と不機嫌な声になる。いくらの住む地が雪の珍しい地域であっても。それだけではしゃぐであっても。
「…ちょっと早いけど、せやけど、この時間なら進ちゃん捕まるかなぁ思ってん」
の言う事はもっともで、たとえば、あと1時間遅ければ確実に出なかったであろう。
二度寝するわけにもいかず、仕方なく起きる支度を始める。普段の習慣通り、時計代わりにテレビをつけると、タイミング良く天気予報のコーナーだった。
「そっちが雪ならこっちは積もっとるわ」
電話片手に起き上がる。さすがに冷える、と床の冷たさから感じた。カーテンを引き、その目で確認すると、しっかりと積もった雪はまだ綺麗なままでそこにあった。
「進ちゃんええなぁ!足跡つけに行かな!」
「いい大人はそないな事せーへんわ」
朝が強いのはも同じで、でもだからといってまだ若い、とも思う。それ以前に子供なのか。



君のように
無垢であれたら




、ええ加減にその呼び方やめや」
いつまでも直らない、直そうとしない呼称に事あるごとに注意しているのだが。は直す気配はない。
「えーなんで?言いやすいのに…」
不満を漏らしながらも、それだったら、と言う。
「…進にい?」
お互いにお互いの沈黙と違和感を感じて、
「やっぱちゃう気がする!進ちゃんでええやん!ほな、いってっしゃい、それとおはよ」
一気に言い放って切られてしまった。ため息ひとつ。それならば、妹のようにのように、足跡でもつけに、
「…雪掻きせななぁ」





(06.12.31 年の離れた兄妹夢とか。)

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