寒さに自然と早足になる帰り道。手持ち無沙汰で携帯に手を伸ばし、忙しさを理由に放置していたメールを開く。届いた時には一瞥しただけで終わってしまったが、今、それが無性に気になってしまった。
送信者の欄にはの名前があり、件名はなし。そこまでは毎日のメールと差異はなかった。ただ、本文が一行のみ。

『冷凍庫の右の奥』

「何がやねん」

聞き手の居ないつっこみをして、主語の抜けた文章を見直す。いつもなら、かなりの長さのメールに読み応えもあるのだが、今回ばかりは一瞬で終わってしまう。何度読み直しても意図はつかめず、素直に開けてみるしかないとあきらめた。


冷凍されたご飯と冷凍されたうどん玉と、それからが置いていったアイスのカップが少し。生活色で満載なその他もろもろの奥底で、『冷凍庫の右の奥』のそれは場違いな色を放っていた。

「…つめた」

赤い包みと金のリボンがかけられて、とてもとても冷たくて。ほんの数分前まで冬の中に居たせいで、冷たいと思っていた手からも貪欲に熱を奪ってゆく。奥から、他の物達がこぼれないように、慎重に引き出して扉を閉める。これで幾分かは温度が上がったはず。明るい蛍光灯の下で見ると、赤い包装紙は少し歪んで留められていた。既製品ではないその証拠に自然と顔が緩んでいく。
金のリボンを引き、赤い紙をほどいた。包装紙と一緒に何かが滑り落ちた。
視線を動かすと、白い、小さなカードのようで。しゃがんで拾い上げると、雪の結晶の模様に英文字。裏には癖のあるの字が並んでいた。

「…今日26日やで」

その体勢のままで、カードを挟んだ手で蓋を開ける。紙で出来た箱の中にはチョコレートブラウンでいっぱいの。小さな四角で埋め尽くされていた。
一粒つまんで口に運ぶ。一瞬の冷たさの後に甘さが広がる。溶け易いのは生チョコだから。が作ったものだ。
ココアの付いた指をなめて、携帯をもう一度開く。
メールの送信日は24日、




街は浮かれたラブソング色




だった2日前。
あと3時間間に合わなかった液晶の時間表示を睨んで、件名は『Re:』のメールを打つ。
もう一粒口に放り込んで、送信予定時刻はマルサンマルゴ。





(06.12.25 ギリギリな感じのクリスマス話)

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