|
(また何かあったでしょ?いつもより笑っているから) 貴方に聞こえないようにそっと、声に出さずにココロの中で呟いて。 もうずっと長い時間をお互いの存在を必要として一緒に居るから。何が、はわからなくても、何か、はわかるから。 貴方が私に、言って欲しいとも頼って欲しいとも思う。でも、貴方は。それを望んではいない。望みもしてくれない。私の知らない非日常の非現実的な世界で現実を生きているから。 何も言わない薬もあるの。ただその存在だけで、ぬくもりだけで癒せるだなんて。わかった気になれるなんて自惚れても良い?口にすることも赦されないなら、せめて。貴方の側に居させてだなんて。とても贅沢な願い。 甘えて欲しいの。ねえ、私にしか出来ない、って思わせて。 「進さん、ありがとう」 ソファに身体を預けている彼。向かい合って立つ私。いつもと逆転した高さ、いつもよりひらいた距離。 「、どないしたん?」 (ほら、またそうやって笑おうとしてる) 微笑みと苦笑の中間点で止めた顔で、いつもの口調で、なんでもないよ、と。 腕を伸ばす。それだけで届いてしまう距離だから。彼の広げた足の間に私の片方の膝を置いて、酷く不安定な体勢になってしまったけれど。代わりに腕をまわして指は髪を滑り、近寄せて(近付いて)私は顔を埋める。少し癖のあるやわらかい彼の髪に。彼の頭を抱きかかえる。 「ありがとう、」 私が救い上げてあげる。貴方のために在てあげる。 「帰ってきてくれて」 私のところに。無事な姿で。 表情は見えない。私が隠してしまっているから。私は何も聞こえないのに、きっと貴方には私の音が聞こえている。それはとても恥ずかしいけれど。 「…かなわんなぁ、には」 私は何も聞かない。聞いてあげない。 だからそのかわり、触れて居させて。 「うん、知ってるよ」 返事のように彼も腕をまわしてきた。私は体勢を崩してしまう。力強い、彼の腕だ。解けた私の腕の中から見上げられた。 「うん、せやな」 (06.12.18) |