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徹夜はしてはいないがそれに限りなく近い。横にもなったし熟睡もした。が、絶対量が少ないためか、安っぽい布団のせいか、どちらにせよ疲れが溜まっていることには変わりない。当直明けの太陽を睨んで眩しさに目を細めた。 帰り道のコンビニに入る。ありがとうございました、と一緒にいってらっしゃいませ、と付けられた。どこにいくねん、と喉の奥で悪態をついた。いつもの道をいつものように疲労感を背負い進む。帰り道の割には、世界は眩しくて鮮やかで、それとは反対のけだるさに意識せずに足だけを進めた。音を立てて階段を上り、やはり無意識で鍵を取り出し、捻る。と、 「あれ、進さんおかえりー!」 鍵の開く音と一緒にやけに眩しい声が聞こえ、その証拠に鮮やかな色をした靴が目に入った。 「どうしたの?仕事は?」 足音を立てて、靴を脱ぐ間に目の前までやって来た。その様子が何かに似ていると思い、その何かを考えようとしたが、生憎回らない頭しか持ち合わせておらず放棄した。 「どうしたの?って…見てわからんか、当直して来たんや」 温度差のある声にため息ひとつ挟んで、ただいま、と声にした。ほら、こっちが正しい答えやろが、と寄り道先の店員に言ってやった。 「お疲れ様でしたー、おかえり進さん」 手に提げていたコンビニの袋を奪い取られて、覗き込まれた。まだ冷たいミネラルウォーターのペットボトルと少しの食料が入っていて、それを見たのか見つけたのかの顔が変わった。 「なんや、えらいご機嫌サンやな」 彼女の為に、と気付いたのかそうではないのか。どちらでも構わなかったが、重かった水は彼女の物だ。あえて、そう言わなくともどうやら伝わったようで、それはの表情から見てとれた。思っていたよりも早く彼女の手に渡ってしまった。袋の中身を確認し終わって、所定の位置に仕舞うために来た道を戻っていった。それに続く形になって先客の居た部屋を歩く。 「だって進さんに会えると思ってなかったから」 「なんやそれ」 「あ!でも…うーん、ちょっと残念なのも…」 「なにがやねん」 前方から返事が返ってきて、立ち止まるの視線の先を追う。 「今お布団干してたの、進さんが帰ってきて昨日よりふっかふかだって気付くかなぁって」 確かに中途半端な形で申し訳程度についているベランダにも、部屋の定位置のどちらにも布団があった。外はとても明るくて陽が照っていて、自分の布団ながら気持ちよさそうだと思ってしまう程に。 「期待、してたんだけど…」 相手に見せる前の、未完成の形で発見されたのはお互い様なのか。そう気付くと妙な気恥ずかしさがあり、あえて口にしなかったと同じく、あえて何も言わなかった。 「お腹すいてる?それとも寝る?」 「…なんやその台詞は」 「新婚さんごっこ?」 「…おもんない、けど寝る」 「じゃあお仕事ご苦労様の進さんに膝枕してあげる」 「なんやそれ」 「お布団まだ干してたいでしょ?」 それは、確かに、と外を見ると肯定の返事だと受け取ったのか、半ば強引に話を進められた。外に干された布団の様にそれもある意味日向ぼっこなのかもしれない、と自分でも良くわからない理屈でまあいいか、と思った。半分の諦めと半分の期待と、そのどちらにも疲れた体は勝てなかったようで。正直に疲労を訴えていた。正直に従うことにした。 「だから代わりに、新婚さんごっこ?」 「…、おまえ…よう酒も入らんとそんなこと言うわ」 「じゃあ布団取り込む?」 「…それはしゃーないなぁ」 「そうそう、うん、おやすみ」 (07.03.13 拍手ログ)(07.05.04 加筆修正) |