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綺麗な包装紙とリボンと、サイズ丁度の紙袋に入れられたチョコレート。何重にも重ねて『特別』を演出して、見ているだけでも幸せになれる。ちいさな一粒がどれだけ甘いかなんて、オンナノコにしか判らないだろう。たったひとつを捜して、想いを込める。 でも、この人で埋まっている売り場にはそんな甘い要素は全くなかった。一人で来るべき場所だった、と頭の隅で思いつつ。デートのついでに寄るには、あまりにも不似合いだった。でも、今更引けないと思い直して、少しだけ、と謝って彼を待たせて飛び込んだ。 「、お疲れさん」 小さい袋を抱えた私を見て、呆れた口調でそう言われた。買ってきたばかりのそれを取り上げられ、どこからか買ってきたコーヒーの缶を代わりに握らされた。まだほんのり暖かいまま、受け取り口をつける。中身はきっちり二口分残してあった。 「ありがとう」 待っててくれて、の意味を込めて。軽くなって、残り一口になったコーヒーを返した。その空いた手で、持っていてくれてありがとう、とチョコレートの袋に手を伸ばす。伸ばしたはずだった。 「しゃあないなぁ、から貰っといたるわ」 その手はひらり、とかわされてしまった。言葉と一緒にコーヒーを飲み干して、先に場所を確認していたのであろう、ひとりで数歩先のゴミ箱まで歩いて行ってしまった。私をここに残したままで。 期待していた?確信していた?チョコレートの意味、知っている? 当たり前のように私から彼の手の中に渡ってしまったチョコレート。 彼の背中に投げかけて、立ち尽くしてしまった。 そうか、そんな小さな気持ちも分かってしまうなんて。 黒髪から覗く少し赤くなった耳だとか、目を合わさない視線だとか、些細な仕草で伝わる気持ち。分かりやすいこの人だから、とか、それを差し引いてさえも。 「うん、仕方ないから、」 自惚れてもいいでしょうか。 「貰っておいてね」 (07.02.02 St.Valentine's Day) (拍手ログ 『ワンフレーズ』にほんのり続きます) |