壁にかかっているカレンダーに丸をつける勇気も度胸も愛嬌もなく、せいぜいスケジュール帳の数字を丸で囲む程度だった。これが同居人でもある女の子を絵に描いたようなユリちゃんなら、もっと可愛らしく丸だの印だのつけるだろうに。生憎、私はそんな愛らしさは少し足りず、機能性を重視した手帳には何も補足は書かず、日付を付属の三色ボールペンの赤色で囲むだけだ。そもそも記念日には間違いないのだが色っぽさの欠片もない記念日で、そんな日は気付いた時に思い出す程度に忘れていても差し障りないかもしれないのだが、陳腐な約束があるので仕方なしに記憶しておかなければならない。
「で、スミレ、プレゼントは?」
 その単純な図式はどうにかならないものか。今から向かう、と短い連絡を受けてからチャイムに反応して鍵とドアを開けると、開口一番にそう言われた。夕御飯の時間に間に合うように、という酷く計画性の欠片もない適当な待ち合わせで、彼が訪ねてきたのは夕方の六時過ぎ。兄妹二人でどこか、外で待ち合わせするには時間も労力も金銭も惜しく、最近越してきたばかりの3LDKにナオを呼び寄せた。むさ苦しい独身官舎よりはよっぽどいい。なにより私は移動しなくて良い。
「負けた方の奢りだから」
 何に負けるのか何を奢るのか、詳細は置いておいて、プレゼントは用意してないと告げる。とナオは不満そうな顔を見せる。思わず軽く額を小突いてから招き入れる。
「結局今年もあんたと一緒だわーはい、独り身に乾杯ー!」
 実際には乾杯も何も、両手は空でグラスも持っていないのだが、乾いた笑いか、諦めた笑いか、そんな類のものといっしょに半ばやけになって言ってみる。はいはい、乾杯ー、と律儀に返してくれる双子の片割れは背ばかり大きく、もう何年も前から見上げないと合わない目線はいまだに納得がいかない。図体ばかり成長して、中身はさっぱりで、でもそれでも確実に時間は経っているという証拠が来るのだ。あとほんの数時間で。
「来年はないから」
 覚えておいて、ともの凄く胡散臭い爽やかな笑顔を貼り付けてナオは言い放つ。捨て台詞のようなそれは半分以上は自分に向けての言葉なのだろう。こんな色っぽい日になるはずの記念日に同い年の妹と顔を突き合わせているだなんて。そんな空しい現実はこれっきりだ、来年こそは、と言い続け、私はそれを聞き続けて、私も同じ台詞を口にして実際は数年が経つ。
「それは去年も聞いた。来年も言うに決まってる、馬鹿ナオだから」











あのこによろしく
















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